認知症ONLINE 編集部

認知症の人の「働きたい」を叶える次世代型デイサービス『DAYS!BLG』に行ってきました!

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認知症になっても、ひとりの人間として社会とつながっていたい――そんな認知症当事者の願いを叶えるデイサービスが、東京都町田市にあります。認知症当事者が地域の「仕事」に携わり、労働の「対価」として謝礼を受け取る。この「有償ボランティア」の取り組みを日々実践しているのが、“次世代型”デイサービスとして注目を集めている『DAYS BLG!』です。

「介護されるだけの存在ではなく、社会の一員として働きたいと思うのは自然なこと」と語るのは、DAYS BLG!の代表・前田隆行さん。その“普通”は、これまでの福祉のイメージを一新し、介護業界の常識を覆すものでした。そんな先進的な取り組みを、ごく自然に、あたりまえの活動として取り入れている、DAYS BLG!の一日に密着させていただきました!

今日一日を過ごす場所、食べるもの。一つひとつを本人が「選ぶ」普通

DAYS BLG!があるのは、東京都町田市の、のどかな街並みの一角。懐かしい雰囲気の民家が、まるごとデイサービス施設になっています。施設を利用するのはほぼ全員、認知症。DAYS BLG!では、職員と対等な関係を築けるようにと、「利用者さん」ではなく「メンバーさん」と呼んでいます。

一日の活動が始まるのは、朝10時。職員と利用者みんなで、一つのテーブルを囲んでお茶を飲みながら、一日の過ごし方をそれぞれ決めていきます。

「今日は、何をして過ごしましょうか?」

メンバーさんが考えているうちに忘れてしまっても大丈夫なように、ホワイトボードを見せながら、一人ひとりに尋ねていきます。ボードに書かれた選択肢は、自動車ディーラーでの洗車に、お昼ごはんの買い物、午後のデザート作り等。メンバーさんが、その日の気分にあったものを選びます。

「お昼は外で食べる?中でお弁当?」「じゃあ、外にしようかな」

DAYS BLG!で大切にしているのは、一日の過ごし方や食べるものをメンバーさんが『選択する』こと。職員の方は言います。「人の生活には本来たくさんの選択肢があるはず。介護施設に入った途端に、突然行動を制限されるのはおかしなことです。一日をどこで、何をして過ごすのか、本人が『選ぶ』ことは、生きる上での満足感につながります」認知症当事者の気持ちに寄り添った、介護の形が垣間みえました。

「はたらきたい」「社会の役に立ちたい」を実現できる普通

自動車ディーラーでの洗車に、レストラン等で提供する玉ねぎの皮むき、カラオケ店の敷地の草取り、保育園の雑巾縫い…。DAY BLG!で引き受けている“仕事”の内容は多岐に渡ります。主な働き手は、認知症当事者であるメンバーさん。「できること」の範囲で働いて、労働の対価として、わずかな、でもれっきとした“謝礼”を受け取ります。

この活動が実現するまでには、長い道のりがありました。『有償ボランティア』として、介護保険サービス利用中のボランティア活動に対して、報酬が支払われることが認められたのは、2011年4月。起案者となった前田さんが、約5年間かけて厚労省に何度も足を運び、認知症本人の「社会の一員としてはたらきたい」という声を届け、やっと勝ち取った権利です。今では、大手自動車ディーラーのHondaCarsや文具メーカーのコクヨ等、企業との連携も実現しています。

取材当日、同行させてもらったHondaCars東京中央町田東店の洗車では、慣れた手つきでホースを持ち、丁寧に車を洗うメンバーさんの姿がありました。元々、車がお好きなのですか?と尋ねると、「特別好きじゃないよ、ただ仕事だから頑張ってやっているんだよ!」と笑顔。働くことは、生きる意欲につながる大事な営みなんだということが伺えました。

洗車に勤しむメンバーさん
真剣に洗車にいそしむメンバーさん。職場となるディーラーとの交渉には、1年半かかったとのこと。今は毎朝の洗車が日課になっているそうです。

子ども達にも知ってほしい認知症のこと。みんなが当事者、みんなで助け合い。

地域の子どもたちに向けた、認知症がテーマの紙芝居の読み聞かせは、DAYS BLG!の夏の恒例行事のひとつ。語り手となるのは、認知症当事者であるメンバーさんです。取材当日にお邪魔したのは、町田市のなんなる学童保育クラブ。最初はガヤガヤと落ち着きのない様子だった子どもたちも、いざ紙芝居が始まると真剣にみつめていました。

「実はね、おじちゃんも認知症なんだよ。」読み終えた後のカミングアウトに、驚く子どもたち。その後、子どもたちからは「どうして認知症になっちゃうの?」「全部わすれちゃうの?」と質問があり、それに丁寧に答えていくメンバーさん。最後には子どもたちに「おじちゃんの顔と名前を憶えてね。もし道で迷っていたら、声を掛けてほしい。挨拶してほしい。ホッとするから。」と伝えていました。

この活動の目標は、「自然とあいさつができる地域」になることだといいます。認知症のあるなしに関係なく、誰もが地域の一員として助けあうこと。認知症を他人ごとにせず、「いずれ自分もなるもの」として受け入れること。一人ひとりの意識が変われば、これから先に自分が認知症になっても暮らしやすい世の中になるのでしょう。

子どもたちへの紙芝居読み聞かせの様子
認知症のおばあちゃんを孫の視点でみた紙芝居「やさしさはおくすり」を読むメンバーさんと、興味深そうに見入る子ども達。

DAYS BLG!が“次世代型”デイサービスと呼ばれる理由がお分かりいただけたでしょうか?ここでご紹介した内容は、DAYS BLG!が行っている活動のごくごく一部です。代表の前田さんは言います。「本来なら、もっと次世代型デイサービスが世の中に増えないといけない。認知症の人が『社会とつながって』過ごせる場所が増えるべきなんです。それには、“認知症の人がはたらくこと”についての介護施設や企業の理解が不可欠です。そして、『認知症になると、何もできなくなってしまう』という根強い世間の偏見を、一人ひとりが変えていかないといけません」

DAYS BLG!の名前には「日々、障壁があってもなくても、皆が生活・集う場であること。社会に発信して変えていこう!」という意味がこめられているとのこと。その由来の通り、前田さんたちは、日々、認知症当事者の声を講演会やメディア等を通して発信し続けています。今後のDAYS BLG!の活動がとても楽しみな一方で、私たちもただ傍観するのではなく、「いつか自分にも訪れるもの」として認知症を受け止め、暮らしやすい社会にするには何ができるか、一人ひとり考えていかないといけないと感じます。